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そんな眠りが欲しい。

君たちはどう生きるか感想:違和感を作り出し、きっちり回収するプロフェッショナル

明日からどう生きようか。

 

君たちはどう生きるかのネタバレ感想記事です。

ネタバレNGな方は読まないでください。

この行から以降はすべて自分個人の覚書なので読む人への配慮とかは特にないです。

なんか、この記事4000文字くらいあるけど普段の記事は100文字あればいい方だから期待しないでおくれ!

 

広告のない映画のレイトショーで満席ってどういうことだってばよ!!

映画を観る前に理解できないことが起きたのである。

17日祝日とはいえ明日から平日の連休最後の日のレイトショー、21時前の回で満席だった。なんなら自分が余裕で行った開演時間30分前で10席ほどしか空きがなく、ギリギリだったら座れなかった可能性高くて戦慄した。

これがスタジオジブリ宮崎駿氏のブランドパワーなのかと。

なお、事前にちょっとしたネタバレというか、ただの映画説明を目にして「冒険活劇」であることと、映画KVのドアップ青鷺妖怪のビジュアルのひとにぎりの情報だけで来場したわけなのだが、あの場にいた人のどのくらいが事前に調べて、あるいは何も知らずに観に行っているのか、日頃もネタバレNGかつ映画館が苦手(他人の距離やら音が気になるのよ)な自分は、好きな映画は公開からすぐに・かつ人の一番いなさそうなタイミングのレイトショー(火水木あるいは日曜のレイトショー)に行くわけなのだが、この3年ほどで満席のレイトショーにぶち当たったのは初めてであった。。。

人をここまで動かす広告のない作品に興味しか湧かねえ!!!

映画とは作品であると同時に体験であると自分は考えている。

だからこそ、この広告社会な現代にアンチテーゼを掲げる作品に血湧き肉躍るのであった。

 

ちなみに、観る前のイメージは二ノ国でした。

あと青鷺はきっと十二国記の青猿またはゲド戦記の影の自分的な存在かなと。

 

なぜだろう。となりのトトロ的世界観の中で

舞台のはじまりは戦争から3年経ったタイミング。

1940年前半。

寝ていたところを突然起こされる主人公眞人。

整った顔をして利発そうだが、明らかに子供扱いされていることがわかる少年は、騒動の大元、母の病院が燃えていることを確認する。

いやーーーー冒頭から建物の描写が熱すぎる。

視点が彷徨いまくってもう一度観たい場面がありすぎて、

これは時間と人手とお金がやばいわなーとなるわけだが、終始そんな感じなので目がものすごく疲れる。疲れるけど、冒頭の場面場面は、日本の歴史的な世界観と、トトロを彷彿とする場面が多く、熱々であった。

子供の頃、急な階段四つん這いで上がったわあとかって、思うじゃん。

 

あと、疎開先ではないのだけれど、東京から母方の実家へ移動した先は完全にトトロのメイとサツキの家のような道でした。おじいちゃん脚力やべえ。

昨今の映画の展開といえば、起承転結がだいたい1:1:1:1くらいの展開、あるい起承/転/結で1:1:1だったりするわけなのだけど、

今作に関しては起承転結は3:1:2:1くらいの配分だっただろうか。なにしろ描きたいテーマのためには冒頭のシーンが大事すぎる。伏線張りタイムである。

 

それにしてもトトロ彷彿シーンが多く、憧憬と現実が入り混じる。

サツキ同様に眞人は転校生という形で田舎の学校に転入するわけなのだが。。。

まあわからんでもない。

そして父親・・・眞人の父親は、今までのジブリ作品よりも一層リアルに描かれた人物に思える。

仕事ができて判断が早く背が高く力もあり子煩悩、

イケおじ要素としては問題ないが子供心には複雑な「前妻も後妻も大事にする姿」

 

そういえば冒頭で夏子さんが父親の職場を「いつか観に行きましょう」といったのがだいぶ気になった。「こんど」ではなく「いつか」なのだ。設定上は婿入りした父親ではあるけれど(というか、姉と結婚して死別して妹と結婚とは現代の感覚からして一層時代背景を感じる)、それでも女の立ち入れぬ場をわきまえた態度。

うわーーーーーーー丁寧に描かれてるーーーーーってなりました。

そして母屋とかも、木造建築の、描かれ方!観光でお寺や神社や古い建物を見るのが好きな人間には口から手が出るくらいにたまらん質感。ずっと観てられる背景って本当すごい。

ファミリーが暮らしている離れのこぢんまりとした洋館もたまらんでした。でもこじんまりといっても階段の角度とか夏子さんの寝室のサイズ感を観たら全然でかい家なんですけどね。

 

後半のネタバレ薄くしておきたいので冒頭ばかり書いている気がするのだが、実際冒頭の要素はこれでもかとあって、一番推しておきたいのが、

青鷺が違和感すぎる件

KVにもなっている青鷺ですね。田んぼや川の近くで育った自分は鷺系ってわりと好きな鳥なんですけど。日本で一般的には「詐欺」を連想する名前であんまりよくないシンボルではありますね。

その青鷺、眞人が現地についてからずっとついてくるのですが、普段は屋根の下には入らない「のぞき屋」とのことで。

鷺の飛び方にしては不恰好というか、ドタバタと大袈裟な飛び方をします。

その違和感はどんどん大きくなっていきます。

 

それはそう、青鷺はただの鳥ではないのでした。

手塚治虫先生の漫画にでてきそうな鼻の大きな=ブサイクの象徴※のキャラクター

※差別的な意味合いではなくキャラクターとしての象徴表現です

そして、トトロの山羊を思わすような人の歯並び

(トトロの山羊は子供の見る世界観だから本来の歯並びと違うのではないかと自分は思っています)

 

「母親はまだ生きているから来い」

それは、あきらかに罠の匂いがぷんぷんする誘い文句だったのでした。

 

眞人さんって、もしかしてアシタカ氏の血を受け継いでたりします?

さて、普通ならばファンタジーの世界で誘い文句を言われた主人公ってまんまと騙されるわけなんですが、眞人さんは一味違います。

青鷺が正体を垣間見せ、自分を狙っていると気づくやいなや、青鷺を射抜くための弓を作り始めます。こわ。

なんなら終始、眞人さんは己の中の葛藤や迷いを映画の中で表面に表すことはありません。

その中にアシタカ氏を連想せずにはいられない。

ただ、眞人さんは何を信じて生きるべきなのか迷っているようには思うのです。

このあたりが本当にプロの仕業。アシタカ氏の祟り神の呪いほどわかりやすいものでなくても、悪夢だったり俯瞰などの緩急つけて描写で彼が彼の言葉を使わずとも葛藤していることを描いていくので。

 

それにしても青鷺を悪きものと武器を手に取る主人公メンタル強すぎる。

メンタル強いからこそ、耐えられないことがいっぱいあったんだろうな。

 

伏線をしっかりきっちり拾っていく作品の姿勢

・生きている母親

・違和感の塊、青鷺

・消えたおおおじ

・若返った使用人

・眞人の怪我

・火事と火の魔法

・意思ある石

拾い始めたらキリがないけれど、疑問点はきっちりかっちり拾われるので頭は使わなくても大丈夫です。聞き逃すと勿体無いので全セリフに全集中してください。

大枠のストーリーとしては思い出のマーニーをだいぶ彷彿させる。あれも起承転結のバランスが同じかな。というかジブリ作品の起承転結バランスって最近の映画作品と比べるとだいぶ異質なのに心地よいのはなぜだろう。

 

血族と定めの話

ラスト、血族として、この世界の次の王として「継ぐ」ことを望む王様。

眞人はそれを断ります。その理由は自分の中にあった嘘をちゃんと告白し、元の世界で生きていくため。

母からもらった本も途中までしか読んでいません。

また、王が語るこの世界が本当に完璧なものであればあの展開にはならなかったでしょう。白インコはもともと王が連れてきた動物。増えに増えて革命を起こすというのはわかりやすい構図ですが、平和で完璧であることは幻想だという象徴でもありました。

 

血族の定めのダメな例としてペリカンも出てきます。

彼らはこの世界ではまともに生きていけず、人に憎まれる生き方しかできません。

また、遠くへ飛ぶことができないため、生まれた子供がどんどん飛べなくもなっていく、と鳥としての存在も否定されていくのです。

 

宮崎駿氏というアニメ映画の巨匠が描く、

「(期待され)敷かれたレールを歩かなくてもいい、自分の選ぶ未来を生きよ」と言わんばかりの展開に胸熱でした。

 

そして、崩壊していく世界。

創造し、破壊される。

戻った現実世界はまだ戦争中で。もちろん戦争にかかわらず命は生まれては死ぬ。すべてのものは有限で、終わりのないものはない。もののけ姫の世界の見え方を継承しているかのように。

そんな世界で、君たちはどう生きるか

 

ずっと気になっていた魔法

物語の中で、火をつかう少女がでてきます。

その子と同時に、父親には昔眞人の母親が神隠しのように1年くらいいなかった時期があるという話を聞くのです。

どう考えても母親じゃん。

残酷なように結びつく火の話。

 

ラストで王の世界を、それでも少女が愛していたことがわかる描写があります。

王もまた、眞人に世界の王を次いでほしいと思いながらも本心を尊重する描写。

人は複数の、時には相反する感情の中で揺れ動きながら生きていくことを示唆するような複雑な描写をアニメーションで描けてしまうって、本当に、Animation(アニマ)が過ぎるよなあと思わずにはいられません。

 

そしてもしかしたら、同じ血族のはずなのに・その世界を謳歌していたはずなのに、母親が王を継ぐことができなかったのは、女だから、ではなく、

あの時にはもう「眞人を産んで火事で命を落とす」という運命づけられていて炎の魔法が使えたのかもしれないなと今は思います。

あれが宮崎駿監督の追い求めた母であり少女でもあるヒロイン性なのかもしれません。

 

 火は平気だ、素敵じゃないか眞人を産むなんて

 

 

 

 

長々と駄文にお付き合いいただきありがとうございます。

またパンフレットの販売が始まったらまた劇場に足を運ぼうと思っています。

映画は作品であり体験。多くの人が関わった国内トップレベルの映像をリアルタイムで観れていることに感謝します。

 

あーーーージブリ作品見直そうーーーーーーーーー

あと謎の魂の生き物かわいいからグッズ化してくれーーーーーーーーー物騒インコもかわいいぞーーーーーーーーお気に入りは担架運んでた子たちーーーーーーーとコック!!!!

 

 

 

 

追記

やっぱりナウシカ(原作漫画)に言及している人が多かった!ガチで面白いのに読んでない人多いだろうと書けないよ!書けないけどナウシカ最終巻の内容を彷彿するのは確か!!!

 

あとラピュタの石とかね、

もののけ姫だけに限らない。

語り尽くせないジブリギミックが此処にはありました。